教会にやってくる人々の讃美の声は高らかに響き、礼拝後のみんなの笑顔は輝いていました。ちいろば君はそのような光景を見るのがとても好きでした。でも、一方で「さびしいなあ。」という思いが、いつも心の片隅にありました。 そのようなちいろば君の様子を見て、あしぶみオルガンさんは話しかけました。 「ちいろば君。」 「あっ、あしぶみおじいさん。」 「わしは、今日まで、この教会で働かせてもらって、本当に幸せだと思っとるんじゃ。今まで、いろんなことがあった。昔の会堂のこと、そして、この会堂ができてからのこと。うれしいこと、悲しいこと、全部知っとるよ。 わしも若いころはいっしょうけんめい聖日礼拝の奉仕をさせていただいたもんじゃ。わしの伴奏に合わせて、教会のみなさんが喜んで讃美をしてくれて・・・ それはそれはうれしいことじゃった。でも、エレクトーンさんが来てくれてからは、聖日礼拝での奉仕はなくなった。そして、働きの中心は教会学校幼稚科の元気のいいお友達といっしょに讃美することに移ったんじゃ。これもまた、楽しい奉仕じゃった。だが、その奉仕も最近は、ちいろば君、あんたの担当になっとったね。讃美の奉仕がほとんどなくなって、さびしくなかったと言えばうそになる。でも、祈りの時間がうーんと増えたことは喜ぶべきことじゃよ。だって、一番大切な時間だからな。それに、年に何回かは、年会や婦人会で奉仕をさせていただくことがあって、その時は意気に感じて讃美したもんじゃよ。そのようなわしの声を聴いて『なかなか味があるなあ』とほめてくれる人もあった。でもな、それは年にほんの数回のこと。・・・」 |
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